第44回日本作業環境測定協会学術大会―実施報告―(2023年)
第44回 日本作業環境測定協会学術大会(旧名称:作業環境測定研究発表会)は、2023年11月8日(水)―10日(金)の3日間、茨城県水戸市の水戸市民会館においてハイブリッド形式(会場+ライブ配信)で開催されました。312名(会場206名、オンライン106名)のご参加ありがとうございました。
研究発表・事例発表・シンポジウム(概要)
第1日:11月8日(水)
凡例:N=日本作業環境測定協会学術大会における発表、J=事例発表
演 題 | 筆頭発表者(所属) | 要 旨 | |
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NJ-01 | 騒音職場における通話用イヤホン着用によるばく露に対する影響 | 中島 隆 (パナソニック健康保険組合 産業衛生科学センター) |
労働現場にて通話用イヤホンの使用が増加してきているが、耳栓を必要とする職場においては、少なくともどちらか一方の耳に耳栓が着用できず、ばく露が懸念される。そこで、騒音職場の作業者、無響室での音響試験用マネキンや被験者にて、通話用イヤホンによる遮音効果を調査した結果、効果に差異が認められた。この検討結果を元に、ばく露を低減するための検討、提案を行ったので報告する。 |
N-02 | VOCモニター・EC計を活用した化学防護手袋の簡易透過試験について | 宮田昌浩 (東京理科大学 環境安全センター) |
化学物質の自律的管理において、経皮吸収防止対策が課題となっている。手袋メーカーで出されている手袋の透過データの多くは単一物質であり、混合物質については記載がなく、またデータは一部の化学物質のみである。よって各事業場で実際に使用している混合物質等の対応には苦慮すると考えられる。今回、簡易的な透過試験を数種類検討したので報告する。 |
NJ-03 | マスクフィット事例 | 吉田将彦 ((株)環境技研) |
本年から義務化されたマスクフィットテストについて、当社での測定事例や改善事例を発表します。【北関東支部推薦演題】 |
NJ-04 | マスクフィットテスト事例紹介 | 大柄俊貴 ((株)北炭ゼネラルサービス) |
本年度より義務化された溶接ヒュームに対する呼吸用保護具(マスク)フィットテストについて、当社では4月より事業所にお伺いする形でフィットテスト業務を行ってきました(7月時点で約110名)。実際に測定を行ってきた中での工夫や不合格者への対応事例について報告します。【北海道支部推薦演題】 |
NJ-05 | 溶接作業従事者におけるマスクフィットテストの実施事例と、現状の問題点について | 市後崎隆則 ((一財)西日本産業衛生会 環境測定センター北九州事業部) |
令和3年4月1日に施行された労働安全衛生法施行令等の改正で、溶接ヒュームは特定化学物質の第二類物質として位置付けられた。この法改正に伴い、当センターでは今年度からフィットテスト業務を開始したことから、フィットテストを実施した28事業所、443名の結果を踏まえて(令和5年6月時点)、現状の問題点と今後の課題をまとめたので報告する。【九州支部推薦演題】 |
NJ-06 | マスクフィットテスト測定結果からの問題点と今後の課題 | 久保田祐郷 ((一財)岩手県薬剤師会検査センター) |
金属アーク等作業で発生する「溶接ヒューム」へのばく露による労働者の健康障害防止のため、労働安全衛生法における特定化学物質障害予防規則が改正され、新たに呼吸用保護具のフィットテストが令和5年4月より義務化された。そこで、弊社で令和5年5月まで行った125人の測定データをさまざまな観点から解析した結果と事例を示すとともに今後の課題と現時点での取り組み内容を紹介する。【東北支部推薦演題】 |
NJ-07 | 溶接作業者の個人ばく露濃度からみた環境改善効果について | 須賀正治 ((公財)神奈川県予防医学協会) |
溶接ヒュームが特化物に指定され2年が経過し、作業のヒューム特性に適した防じんマスクの選定とフィットテストによる個人防護対策が推進されている。今回は、集じん機や換気扇の新設、作業場のレイアウト変更などの環境技術的対策を実施した4事例の改善効果を、個人ばく露濃度(吸入性粉じん・マンガン)で評価したので報告する。 |
NJ-08 | 溶接ヒューム測定 対策後の測定について | 枝廣政志 ((株)近畿エコサイエンス) |
溶接作業の障害防止措置が義務づけられ、溶接ヒュームの濃度測定を実施した結果より必要な低減措置を実施することになっている。しかし、現状では低減措置を行わずに保護具を選定している場合があるため、今回はその状況と濃度の低減措置後の測定状況についての報告を行う。【京滋支部推薦演題】 |
第2日:11月9日(木)
演 題 | 筆頭発表者(所属) | 要 旨 | |
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NJ-09 | パッシブサンプリングと加熱脱着法による有機溶剤測定の検討 | 今井秀子 (パナソニック健康保険組合 産業衛生科学センター) |
今後の化学物質の自律的管理の推進において、事業場で簡単に測定ができるパッシブサンプリングは重要性が高まると考える。当センターでは以前より有機溶剤のアクティブサンプリングと加熱脱着法による測定方法やその利点等について報告してきたが、今回はパッシブサンプリングと加熱脱着法による有機溶剤測定の検討を実施した。その基礎データとなるサンプリングレートと保存安定性等についてまとめたので報告する。 |
N-10 | 有機溶剤等の塗布作業場等における個人サンプリング法の有効性の検討 | 大場恵史 ((株)東海分析化学研究所) |
令和5年告示第174号により測定基準が改正され、個人サンプリング法の対象物質等が追加された。有機溶剤等作業は、塗装作業等に限定する取り扱いが廃止され、すべての作業に対象が拡大された。本研究では、塗布作業場等において個人サンプリング法による測定を行い、同時に行ったA測定結果と比較することにより、個人サンプリング法の有効性を検討した。あわせて、作業者の生物学的モニタリング結果との相関関係も調査した。 |
N-11 | キャリアガスに窒素ガス用いたGC/FIDとGC/MSにおける有機溶剤分析の感度比較 | 杉山みなみ (内藤環境管理(株)) |
有機溶剤はGC/MSやGC/FIDを用いて分析し、一般にGC/MSはGC/FIDに比べ感度が高いと言われている。一方GCのキャリアガスに使用されるヘリウムガスの供給不足により代替ガスとして窒素ガスが用いられることがあるが、その場合GC/MSでは感度が低下する事例が報告されている。そこでキャリアガスとして窒素ガスを使用した場合、GC/FIDとGC/MSのどちらがより高感度に分析できるか検証を行った。【北関東支部推薦演題】 |
日本作業環境測定協会学術大会シンポジウム
Ⅰ | 基調講演 「化学物質の自律的管理と専門家の重要性」 |
大前 和幸(慶応義塾大学名誉教授) | |
Ⅱ | パネルディスカッション 「作業環境測定士の将来像―化学物質の自律的管理に作業環境測定士はどう貢献できるか―」 |
司 会 | 鷹屋 光俊 | 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 |
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パネリスト | 小川 悟 | (株)環境測定サービス |
〃 | 田吹光司郎 | (一財)西日本産業衛生会 |
〃 | 土肥誠太郎 | (株)MOANA土肥産業医事務所 |
〃 | 宮田 昌浩 | 東京理科大学 |
助言者 | 小川 直紀 | 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善・ばく露対策室 |
(以上、敬称略) |
第3日:11月10日(金)
演 題 | 筆頭発表者(所属) | 要 旨 | |
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NJ-12 | 建材として使用されていた木質圧縮板より同定したアスベストの報告 | 道林泰樹 (福井県環境保全協業組合) |
今回報告するアスベスト含有の木質圧縮板は石綿含有建材レベル3その他のボードに該当するが、アスベストが含有していたという報告は稀有である。実際の木質圧縮板は、書類倉庫の天井材として使用されていた。実体顕微鏡、偏光顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)・エネルギー分散型X線回折装置(EDX)、X線回折装置を用いて測定を行い、アスベスト種の一つであるクリソタイルの含有を確認した。 |
NJ-13 | アスベスト定性分析と試料データ蓄積の有効性 | 遠藤春奈 ((株)環境測定サービス) |
建材のアスベスト分析は、建築物の老朽化による解体や改修工事に伴い実施され、規制が年々強化されている。このような状況から、分析件数の増加や顧客要望の多様化が予測されるため、弊社が取り組んでいる「試料データの蓄積」の有効性について報告する。 |
NJ-14 | アスベスト分析に伴う局排設置と作業環境測定事例 | 坂本昌也 (常磐開発(株)) |
当社にてアスベスト分析室を設置するにあたり、石綿障害予防規則に基づき2台の局所排気装置を設けることになった。1台は同規則第16条に従来から規定する装置(屋外排気)、もう1台はただし書きによる装置(屋内排気)とした。当該局排の設置にあたり、装置の設計・施工管理から始まり分析室稼働後の作業環境測定までを報告する。【東北支部推薦演題】 |
N-15 | PFBHA捕集剤を用いた作業環境中のアクロレインの分析方法 | 下中洋一((株)高見沢分析化学研究所) | 来年からリスクアセスメント対象物のうち67物質の濃度基準値が設定される。その中でアクロレインは短時間濃度基準値の0.1 ppmが設定されるが、アクロレイン自体が不安定な物質であり、高度な測定技術が求められる。本研究では、PFBHA捕集剤を用いたアクロレインの測定方法を検討する。現場でのサンプリングを実施することから、保存安定性に注目し、15分間のサンプリング後から分析するまで具体的に検証する。 |
NJ-16 | PCB含有廃棄物の分別作業場における大気用PFASサンプラーを用いたPCBsの測定事例 | 小泉 圭 ((株)クレハ分析センター) |
PCB含有廃棄物の分別を行う作業場において、粉じん中のCo-PCBsによりDXNsの作業環境測定結果が第三管理区分と判定される事例があった。作業環境の改善を行う上で粉じんの粒径に着目し、粉じんを分級して採取可能な大気用PFASサンプラー(FM4)を用い、粒径とPCBs濃度の関係を調査した。また、DXNs測定に用いるハイボリュームエアサンプラーに替わる簡易的な採取方法にFM4が使用できるか検討した。 |
NJ-17 | 室内循環型封じ込め設備(ダクトレスヒュームフード)の発散防止抑制措置としての活用について | 岩崎琢磨 (オリエンタル技研工業(株)) |
平成24年の有機則等の改正により、多様な発散防止抑制措置が導入可能になった。本発表では、有害空気を浄化して室内に循環排気する発散防止抑制措置「ダクトレスヒュームフード」の概要と注意点、全国での許可事例を紹介する。従来の局所排気装置が屋外排気型なのに対し、ダクトレスヒュームフードはダクト不要の室内循環排気型で、工事費、工期、省エネの観点から利点が多く、作業環境改善の新たな選択肢となると考える。 |
NJ-18 | スチレン取扱い作業場の化学物質の自律的管理に向けたリスク評価方法の検証と今後の課題 | 楫山優樹 ((一財)西日本産業衛生会 環境測定センター大分事業部) |
近年、事業場における自律的な化学物質規制の強化が求められている。当センターではスチレンを取り扱う作業場について、クリエイトシンプル法によるリスクアセスメントと作業環境測定法(A・B測定、C・D測定)をあわせて実施し、測定結果や評価を比較検討したので、報告する。 |
N-19 | ステンレス鋼の溶接リスクアセスメント | 中井知章 (中井知章技術士事務所) |
ステンレス鋼の溶接において、溶接時に発生するヒュームは発がん性のある六価クロム酸やニッケル化合物を含んでいる。溶接ヒュームはリスクアセスメント対象物でないが、リスクアセスメントの結果に基づいて、ばく露の程度を最小限度にするよう努めなければならない。ここでは、溶接ヒュームの移行率を考慮したクリエイトシンプルを用いて、六価クロム酸およびニッケル化合物のリスクアセスメントを行った結果について報告する。 |
N-20 | コバルト取扱い作業場における床面汚染度の実態把握について | 東 正樹 ((株)鹿児島環境測定分析センター) |
コバルトは管理濃度が0.02 mg/m3と低く、極微量でも管理濃度を超えてしまうため、作業環境が悪化していても目視ではほとんど確認できない。一方、作業場の床は毎日清掃していてもある程度汚染されていると考えられる。本研究では、コバルト含有金属切削作業場における床面のコバルト汚染の実態を調査し、汚染量を推定して床からの二次発じんによる影響について考察した。【九州支部推薦演題】 |
NJ-21 | 新たな濃度基準値設定物質の実際の取扱い作業場における確認測定の事例紹介 | 栗田朋人 ((株)東海分析化学研究所) |
安衛則が改正され、一部のRA対象物は、ばく露を濃度基準値以下にすることが義務付けられた。現状、濃度基準値が設定された物質は、令和5年告示第177号で定められた67物質である。また、技術上の指針が公示され、濃度基準値以下の確認測定の方法等が規定された。本発表では、新たに濃度基準値が定められた物質について、実際の取り扱い作業場で確認測定を行った事例を、クリエイトシンプルによる推計結果とあわせて紹介する。 |
NJ-22 | フッ化水素酸取り扱い職場のリスクアセスメント事例 | 本庄 勉 ((一財)滋賀保健研究センター) |
2022年度研究発表会にて、「特別規則の対象となっていない化学物質の管理の現状」を発表し、リスクアセスメントを効果的に活用するためには、職場の全員が参加するシステム作りが望まれると報告した。弊社がリスクアセスメントの導入を推奨・指導した事業所のうち、良好にリスクアセスメントを継続されている事業所が見受けられたため、当該事業所の取り組み内容を紹介する。【京滋支部推薦演題】 |
NJ-23 | リアルタイムモニター簡易測定法とGC-PID測定法を併用したシンナー成分の化学物質リスクアセスメント測定例 | 吉田 直 ((株)エルエフ関西) |
リアルタイムモニター(PID法)では、シンナー等のように複数成分が混在すると誤差が大きくなり各成分ごとの正確な測定が困難となる。リアルタイムモニター(PID法)簡易測定法にGC-PID測定法を併用することによって、シンナー等の複数成分であっても各成分ごとに比較的精度の良い化学物質リスクアセスメント測定が可能か否かを模擬実験で確かめた。 |
交流集会(概要)
学術大会2日目の11月9日(木)17:30からホテル・ザ・ウエストヒルズ・水戸において交流集会を開催しました。新型コロナウイルス感染症の拡大の関係から令和元年11月郡山市での開催を最後に4年ぶりの開催でした。
参加者は177名で、日本労働衛生工学会と共同で開催したため、日本労働衛生工学会の参加者49名を含めると合計の226名で盛会裏に行われました。
開会式では来賓の茨城労働局稲葉労働基準部長よりご挨拶をいただきました。
また、今回初めての試みとして実行委員による水戸黄門の寸劇と水戸黄門にちなんだ水戸の史跡紹介等が行われ、大いに会場が盛り上がりました。
作業環境測定関連機器展示会
作業環境測定関連機器等の展示会も行われました。
メーカープレゼンテーション
M-01 | 新商品のご紹介 (株)ウエスト |
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M-02 | 改定JIS T 8150に準じたフィットテストについて トランステック(株) |
M-03 | ソフトウェア製品「環境Office」の紹介 秋田環境測定センター(株) |
M-04 | 化学物質のリスク対策ソフト (株)日本ハイソフト |
M-05 | 作業環境測定などにご使用いただける製品のご紹介 (株)ガステック |
M-06 | 作業環境測定(直接捕集法)を自動化する有効性 ラボテック(株) |
M-07 | 作業環境測定等に使用できる機器の紹介 光明理化学工業(株) |
M-08 | フィットテスト支援アプリ「Wear it Right」のご紹介 スリーエムジャパンイノベーション(株) |
M-09 | 有機溶剤用パッシブサンプラーのご紹介 (株)アイデック |
M-10 | 製品ご紹介 マスクフィッティングテスターMT-11D/MT-05U,PM4-6N2個人サンプラー 柴田科学(株) |
M-11 | 作業環境システム及びeaXrossのご紹介 (株)エイビス |
M-12 | 騒音ばく露計「NB-14」について リオン(株) |
M-13 | 石綿繊維の検出の迅速化を目標としたAIモデルの開発(その2) 日本エヌ・ユー・エス(株) |
M-14 | 光散乱式デジタル粉じん計3444のご紹介 日本カノマックス(株) |
M-15 | 防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)について (株)重松製作所 |
M-16 | 作業環境計測装置のご紹介―フィルタとその捕集性能検証試験― 東京ダイレック(株) |
お問い合わせ先
公益社団法人 日本作業環境測定協会
学術大会係
TEL:03-3456-1601
FAX:03-3456-5854