作業環境測定

作業環境中に有害な因子が存在する場合には、その有害な因子を、除去するか、ある一定の限度まで低減させるか、またはこれらの対策だけでは有害な因子への労働者のばく露を十分な程度まで低減させることができない場合には、保護具や保護衣等の個人的なばく露防止のための手段を利用すること等によって、その有害な因子による労働者の健康障害を未然に防止することが必要です。

作業環境中に存在することがある有害な因子としては、有機溶剤・鉛およびその化合物・特定化学物質等の有害な化学物質、じん肺の原因となる粉じん等の有害な物質のほか、電離放射線、電磁波、有害光線、騒音、振動、高温・低温、高湿度等の物理的因子等もあります。また、有害な化学物質等の中には感作性(人に感作[ある抗原物質に対して過敏な状態にすること]を生じさせるおそれのある性質のこと)があるものもあり、これらの感作性のある化学物質等についての作業環境管理には、その化学物質等に過敏な反応を起こすことのある労働者についての特別の注意が必要です。

「作業環境管理」を進めるためには、作業環境中にこれらの有害な因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているのかを把握しなければなりません。この把握をすることを広い意味で作業環境測定といっています。

労働安全衛生法第2条では、「作業環境測定」とは「作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリングおよび分析(解析を含む)をいう」と定義されています。

作業環境測定の実施

作業環境測定の実施

同法第65条第1項では、「事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令(=労働安全衛生法施行令第21条;下表)で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、およびその結果を記録しておかなければならない」と、同条第2項では、「前項の規定による作業環境測定は、厚生労働大臣の定める作業環境測定基準に従って行わなければならない」こと、また、同法第65条の2では、「事業者は、前条第1項…の規定による作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、施設または設備の設置または整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない」、「事業者は、前項の評価を行うに当たっては、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める作業環境評価基準に従って行わなければならない」、「事業者は、前項の規定による作業環境測定結果の評価を行ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その結果を記録しておかなければならない」とされています。

これらが、労働安全衛生法で義務付けられている作業環境測定の内容ですが、前述しましたように、「作業環境測定」とは、「作業環境管理」を進めるための前提となる、作業環境中に有害な因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているかを把握することであることを忘れてはなりません。

作業環境測定を行うべき作業場と測定の種類等

作業環境測定を行うべき作業場 測  定
作業場の種類(労働安全衛生法施行令第21条) 関係規則 測定の種類 測定回数 記録の保存年数
土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場 粉じん則26条 空気中の濃度および粉じん中の遊離けい酸含有率 6月以内ごとに1回 7
2 暑熱、寒冷または多湿屋内作業場 安衛則607条 気温、湿度、ふく射熱 半月以内ごとに1回 3
3 著しい騒音を発する屋内作業場 安衛則590、591条 等価騒音レベル 6月以内ごとに1回(注1) 3
4 坑内の作業場 炭酸ガスが停滞し、または停滞するおそれのある作業場 安衛則592条 炭酸ガスの濃度 1月以内ごとに1回 3
28℃を超え、または超えるおそれのある作業場 安衛則612条 気温 半月以内ごとに1回 3
通気設備のある作業場 安衛則603条 通気量 半月以内ごとに1回 3
5 中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの 事務所則7条 一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度 2月以内ごとに1回(注2) 3
6 放射線業務を行う作業場 放射線業務を行う管理区域(注3) 電離則54条 外部放射線による線量当量率または線量当量 1月以内ごとに1回(注4) 5
放射性物質取扱作業室 電離則55条 空気中の放射性物質の濃度 1月以内ごとに1回 5
事故由来廃棄物等取扱施設(注5)
坑内における核原料物質の掘採の業務を行う作業場
特定化学物質(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等(注6) 特化則36条 第1類物質または第2類物質の空気中の濃度 6月以内ごとに1回 3

(特別管理物質については30年間)

特定有機溶剤混合物を製造し、または取り扱う屋内作業場(注6) 特化則36条の5 空気中の特別有機溶剤および有機溶剤の濃度 6月以内ごとに1回 3
石綿等を取り扱い、もしくは試験研究のため、または石綿分析用試料等を製造する屋内作業場(注6) 石綿則36条 石綿の空気中における濃度 6月以内ごとに1回 40
一定の鉛業務を行う屋内作業場 鉛則52条 空気中の鉛の濃度 1年以内ごとに1回 3
9 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場(注7) 酸欠則3条 第1種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素の濃度 作業開始前等ごと 3
第2種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素および硫化水素の濃度
有機溶剤(第1種有機溶剤または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場 有機則28条 当該有機溶剤の濃度 6月以内ごとに1回 3

★ ○印(1・6ロハ・7・8・10)は、作業環境測定士による測定が義務付けられている指定作業場であることを示す。(作業環境測定法施行令第1条「指定作業場」)

★ ※印(1・7・8・10)は、作業環境評価基準が適用される作業場を示す。

(注)

  1. 設備を変更し、または作業工程もしくは作業方法を変更した場合には、遅滞なく、等価騒音レベルを測定しなければならない。
  2. 測定を行おうとする日の属する年の前年1年間において、室の気温が17度以上28度以下および相対湿度が40%以上70%以下である状況が継続し、かつ、測定を行おうとする日の属する1年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、室温および外気温ならびに相対湿度については、3月から5月までの期間または9月から11月までの期間、6月から8月までの期間および12月から2月までの期間ごとに1回の測定とすることができる。
  3. 作業環境測定士でなくてよい。
  4. 放射線装置を固定して使用する場合において使用の方法および遮へい物の位置が一定しているとき、または3.7ギガベクレル以下の放射性物質を装備している機器を使用するときは、6月以内ごとに1回。
  5. 電離則改正(平成25・7・1施行)により加わった。
  6. 平成17年に「石綿障害予防規則」が「特定化学物質障害予防規則」から分離して制定されたため、特定化学物質と石綿を切り離して数えて、作業環境測定を行うべき作業場を11事業場と整理している場合もある。ただし、労働安全衛生法施行令第21条の表現は現在でも1―10号となっているため、本表では10事業場とした。
  7. 酸素欠乏危険場所については、酸素欠乏危険作業主任者(第2種酸素欠乏危険作業にあっては、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者)に行わせなければならない。
  8. 以上のとおり、(1)安衛法65条の測定は、作業環境の平均的状況を把握するために行うもの。一方、(2)安衛法22・23条の測定は、危害(死亡、健康障害等)を防止するために必要なときに行うもの。(3)安衛法57条の3では、通知対象物に係る原材料・作業方法の新規導入時や変更時に、危険性または有害性の調査(リスクアセスメント)の義務があり、(4)安衛法57条の3では通知対象(SDS)の化学物質等についてリスクアセスメントが平成28年6月1日より義務化された。リスクアセスメントの実施手順の参考となる「指針」では、作業環境測定結果を資料として活用することを挙げている。(2)(3)(4)は作業環境測定士でなくてよい。

測定対象物質と管理濃度(作業環境評価基準 別表)

CAS登録番号、日本産業衛生学会による許容濃度勧告も盛り込んだ詳細な表は、会員専用ウェブサイトに掲載されています。

2021年04月01日
物質名 管理濃度
1 土石,岩石,鉱物,金属または炭素の粉じん 次の式により算定される値
  E=3.0/(1.19Q+1)
E: 管理濃度(mg/m3
Q: 当該粉じんの遊離けい酸含有率(%)
2 アクリルアミド 0.1 mg/m3
3 アクリロニトリル 2 ppm
4 アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基またはエチル基である物に限る) 水銀として0.01 mg/m3
4の2 エチルベンゼン 20 ppm
5 エチレンイミン 0.05 ppm
6 エチレンオキシド 1 ppm
7 塩化ビニル 2 ppm
8 塩素 0.5 ppm
9 塩素化ビフェニル(別名:PCB) 0.01 mg/m3
9の2 オルト-トルイジン 1 ppm
9の3 オルト-フタロジニトリル 0.01 mg/m3
10 カドミウムおよびその化合物 カドミウムとして0.05 mg/m3
11 クロム酸およびその塩 クロムとして0.05 mg/m3
11の2 クロロホルム 3 ppm
12 五酸化バナジウム バナジウムとして0.03 mg/m3
12の2 コバルトおよびその無機化合物 コバルトとして0.02 mg/m3
13 コールタール ベンゼン可溶性成分として0.2 mg/m3
13の2 酸化プロピレン 2 ppm
13の3 三酸化二アンチモン アンチモンとして0.1 mg/m3
14 シアン化カリウム シアンとして3 mg/m3
15 シアン化水素 3 ppm
16 シアン化ナトリウム シアンとして3 mg/m3
16の2 四塩化炭素 5 ppm
16の3 1,4-ジオキサン 10 ppm
16の4 1,2-ジクロロエタン(別名:二塩化エチレン) 10 ppm
17 3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA) 0.005 mg/m3
17の2 1,2-ジクロロプロパン 1 ppm
17の3 ジクロロメタン(別名:二塩化メチレン) 50 ppm
17の4 ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名:DDVP) 0.1 mg/m3
17の5 1,1-ジメチルヒドラジン 0.01 ppm
18 臭化メチル 1 ppm
19 重クロム酸およびその塩 クロムとして0.05 mg/m3
20 水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く) 水銀として0.025 mg/m3
20の2 スチレン 20 ppm
20の3 1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名:四塩化アセチレン) 1 ppm
20の4 テトラクロロエチレン(別名:パークロルエチレン) 25 ppm
20の5 トリクロロエチレン 10 ppm
21 トリレンジイソシアネート 0.005 ppm
21の2 ナフタレン 10 ppm
21の3 ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き,粉状のもに限る) ニッケルとして0.1 mg/m3
22 ニッケルカルボニル 0.001 ppm
23 ニトログリコール 0.05 ppm
24 パラ-ニトロクロルベンゼン 0.6 mg/m3
24の2 砒素およびその化合物(アルシンおよび砒化ガリウムを除く) 砒素として0.003 mg/m3
25 弗化水素 0.5 ppm
26 ベータ-プロピオラクトン 0.5 ppm
27 ベリリウムおよびその化合物 ベリリウムとして0.001 mg/m3
28 ベンゼン 1 ppm
28の2 ベンゾトリクロリド 0.05 ppm
29 ペンタクロルフェノール(別名:PCP)およびそのナトリウム塩 ペンタクロルフェノールとして0.5 mg/m3
29の2 ホルムアルデヒド 0.1 ppm
30 マンガンおよびその化合物 マンガンとして0.05 mg/m3
30の2 メチルイソブチルケトン 20 ppm
31 沃化メチル 2 ppm
31の2 リフラクトリーセラミックファイバー 5 μm以上の繊維として0.3本/cm3
32 硫化水素 1 ppm
33 硫酸ジメチル 0.1 ppm
33の2 石綿 5 μm以上の繊維として0.15本/cm3
34 鉛およびその化合物 鉛として0.05 mg/m3
35 アセトン 500 ppm
36 イソブチルアルコール 50 ppm
37 イソプロピルアルコール 200 ppm
38 イソペンチルアルコール(別名:イソアミルアルコール) 100 ppm
39 エチルエーテル 400 ppm
40 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名:セロソルブ) 5 ppm
41 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名:セロソルブアセテート) 5 ppm
42 エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名:ブチルセロソルブ) 25 ppm
43 エチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルセロソルブ) 0.1 ppm
44 オルト-ジクロルベンゼン 25 ppm
45 キシレン 50 ppm
46 クレゾール 5 ppm
47 クロルベンゼン 10 ppm
48 酢酸イソブチル 150 ppm
49 酢酸イソプロピル 100 ppm
50 酢酸イソペンチル(別名:酢酸イソアミル) 50 ppm
51 酢酸エチル 200 ppm
52 酢酸ノルマル-ブチル 150 ppm
53 酢酸ノルマル-プロピル 200 ppm
54 酢酸ノルマル-ペンチル(別名:酢酸ノルマル-アミル) 50 ppm
55 酢酸メチル 200 ppm
56 シクロヘキサノール 25 ppm
57 シクロヘキサノン 20 ppm
58 1,2-ジクロルエチレン(別名:二塩化アセチレン) 150 ppm
59 N,N-ジメチルホルムアミド 10 ppm
60 テトラヒドロフラン 50 ppm
61 1,1,1-トリクロルエタン 200 ppm
62 トルエン 20 ppm
63 二硫化炭素 1 ppm
64 ノルマルヘキサン 40 ppm
65 1-ブタノール 25 ppm
66 2-ブタノール 100 ppm
67 メタノール 200 ppm
68 メチルエチルケトン 200 ppm
69 メチルシクロヘキサノール 50 ppm
70 メチルシクロヘキサノン 50 ppm
71 メチル-ノルマル-ブチルケトン 5 ppm
アルファ-ナフチルアミンおよびその塩
インジウム化合物
オーラミン
オルト-トリジンおよびその塩
クロロメチルメチルエーテル
ジアニシジンおよびその塩
ジクロルベンジジンおよびその塩
パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン
マゼンタ

個人サンプリング法

令和2年1月、作業環境測定法施行規則および関係告示の改正があり、作業環境測定の手法に「個人サンプリング法」という新しいデザイン・サンプリングの手法が追加されました。

個人サンプリング法は、従来の手法(従来法)では試料採取機器(サンプラー)を定点に置いて空気中の有害物を採取していたのに対し、サンプラーを有害物取扱作業に従事する作業者の身体に装着して空気中の有害物を採取し分析します。すなわち定点でなく移動しながらのサンプリングになります。

個人サンプリング法を採用するか否かは事業者の任意の選択によることとされています。個人サンプリング法は一部の先行導入物質・作業について、令和3年4月1日から導入されました。将来は全作業に拡大することとされています。

個人サンプリング法の概要

従来法におけるサンプリングの方法

個人サンプリング法による測定は、従来法のA測定に相当する作業場の空気中の平均的な有害物の分布状態を把握するC測定と、従来法のB測定に相当する高濃度ばく露を把握するD測定から成っています。これらの測定で行うサンプリングの方法は以下のとおりです。
なお、サンプラーのセッティングが違うだけで、作業者に装着するサンプラーの種類は従来法と同様で対象物質に応じて作業環境測定基準で指定されたものです。

  • 【C測定】 有害物を取り扱う作業を行う複数の作業者の身体にサンプラーを装着して原則全作業時間を通してサンプリング
  • 【D測定】 発散源への近接作業等、高濃度のばく露が想定される作業を行う作業者の身体にサンプラーを装着して15分間サンプリング
個人サンプリング法の特徴

作業環境の評価は、従来法による測定結果に基づきおおむね適切にされていますが、作業環境の空気中への有害物の発散の変動が大きい場合や作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難な時などは適切な評価が得られない場合があります。
個人サンプリング法は、有害物の発散状況の変動等の適正な測定の阻害要因があっても作業者の呼吸域の空気を正確に測定することができ、また、リスクアセスメントと作業環境測定を一括して促進することができるものです。

当面対象となる作業

令和3年4月から個人サンプリング法による測定を選択できるのは、(1)管理濃度(作業環境の状態を評価するための指標)が低い下表に掲げる特定化学物質または鉛等を製造しまたは取り扱う作業と、(2)有機溶剤および特別有機溶剤(有機溶剤等)の取扱作業のうち塗装作業等有機溶剤等の発散源の場所が一定しないものです。

個人サンプリング法先行導入対象の管理濃度が低い特定化学物質等
物質名 管理濃度
1 ベリリウム ベリリウムとして0.001 mg/m3
2 インジウム化合物
3 オルト-フタロジニトリル 0.01 mg/m3
4 カドミウムおよびその化合物 カドミウムとして0.05 mg/m3
5 クロム酸およびその塩 クロムとして0.05 mg/m3
6 五酸化バナジウム バナジウムとして0.03 mg/m3
7 コバルトおよびその無機化合物 コバルトとして0.02 mg/m3
8 3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA) 0.005 mg/m3
9 重クロム酸およびその塩 クロムとして0.05 mg/m3
10 水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く) 水銀として0.025 mg/m3
11 トリレンジイソシアネート 0.005 ppm
12 砒素およびその化合物(アルシンおよび砒化ガリウムを除く) 砒素として0.003 mg/m3
13 マンガンおよびその化合物 マンガンとして0.05 mg/m3
14 鉛およびその化合物 鉛として0.05 mg/m3

個人サンプリング法による測定の実施者および結果の評価

個人サンプリング法によるデザイン・サンプリングについては個人サンプリング法について新たに登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関が行うこととされております。なお、分析の実施者の資格は従来法と同じです。
個人サンプリング法による測定結果が出たら従来法と同様に作業環境評価基準に基づき評価を行います。この評価の方法も、C測定はA測定に準じて、D測定はB測定に準じて第1・第2・第3管理区分のいずれかに区分して行います。第1の場合は現状維持、第2・第3の場合は改善努力というのも従来法と同じです。
※モデル様式はこちら

作業環境測定士

作業環境測定法第2条では、「作業環境測定士」とは、「第1種作業環境測定士および第2種作業環境測定士をいう」と定義されているとともに、「第1種作業環境測定士」は、「厚生労働大臣の登録を受け、指定作業場について作業環境測定の業務を行うほか、第1種作業環境測定士の名称を用いて事業場(指定作業場を除く。次号※において同じ)における作業環境測定の業務を行う者をいう」と定義されています。

※「次号」とは、第2種作業環境測定士の定義でも同じく「指定作業場を除く」とされていることを示します。

また、「第2種作業環境測定士」は、「厚生労働大臣の登録を受け、指定作業場について作業環境測定の業務(厚生労働省令で定める機器を用いて行う分析[解析を含む]の業務を除く)を行うほか、第2種作業環境測定士の名称を用いて事業場における作業環境測定の業務を行う者をいう」と定義されています。
より具体的には、この「厚生労働省令で定める機器」としては、作業環境測定法施行規則第2条により、簡易測定器※以外の機器とされています。

※(1)検知管方式によりガスまたは蒸気の濃度を測定する機器、(2)グラスファイバ-ろ紙を装着して相対沈降径が概ね10マイクロメ-トル以下の浮遊粉じんを重量法により測定する機器を標準として較正された浮遊粉じんの重量を測定する機器―等とされています。

これらの(第1種作業環境測定士および第2種作業環境測定士についての)定義の後段の部分で「…事業場(指定作業場を除く)」とされているのは、法令上の文言の整理を厳密にしてあるものですが、つまり、第1種作業環境測定士または第2種作業環境測定士の名称を用いて作業環境測定の業務を行う際には、その業務の範囲は、指定作業場には限られないという意味と解されます。

実際的には、

第1種作業環境測定士については、登録の区分として、「鉱物性粉じん」「放射性物質」「特定化学物質」「金属類」「有機溶剤」の5種類の区分があり、それぞれの登録を受けた区分ごとに作業環境測定の業務の全部が行えます。

第2種作業環境測定士については、作業環境測定の業務のうち、デザイン、サンプリングおよび簡易測定器を用いた分析(解析を含む)が行えます。

これらのほかに個人サンプリング法の登録の区分があり、この登録を受けた作業環境測定士は個人サンプリング法によるデザイン、サンプリングが行えます。

作業環境測定士の資格要件は、作業環境測定法ならびに作業環境測定法施行令および作業環境測定法施行規則その他の命令で規定されていますが、原則として「作業環境測定士試験に合格し、かつ、都道府県労働局長または厚生労働大臣もしくは都道府県労働局長の指定する者が行う講習を修了した者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者で、厚生労働省令で定めるもの」とされています。
なお、指定作業場における作業環境測定については、(1)事業者が自ら雇用している作業環境測定士、または、(2)作業環境測定機関に所属する作業環境測定士のみが実施できると定められています(作業環境測定法第3条)。

参考図書

図書・分析試料販売サイトより、お買い求めください。


作業環境測定のためのデザイン・サンプリングの実務―A・B測定編―(上)(J-86)

作業環境測定のためのデザイン・サンプリングの実務―A・B測定編―(下)(J-87)

作業環境測定のためのデザイン・サンプリングの実務―C・D測定編―(J-90)

作業環境測定のための労働衛生一般・労働衛生管理の実務(J-96)

マンガで知るVol.1 作業環境測定が必要です!(J-111)

産業医のための よくわかる作業環境測定(J-77)

作業環境測定のための機器分析の実務[特定化学物質・金属類・有機溶剤](J-73)

作業環境測定のための分析概論(J-11)

作業環境測定の実務の進め方(J-71)

自社測定事業場における作業環境管理のための手引き(J-78)

作業環境測定ガイドブック 1[鉱物性粉じん・石綿・RCF]の測定の実務(J-91)

作業環境測定ガイドブック 2[電離放射線・放射性物質]の測定の実務(J-84)

作業環境測定ガイドブック 3[特定化学物質(金属類及び特別有機溶剤を除く)]―物質別各論(J-74)

作業環境測定ガイドブック 4[金属類]―物質別各論(J-75)

作業環境測定ガイドブック 5[有機溶剤(特別有機溶剤を含む)]―物質別各論(J-76)

作業環境測定ガイドブック 6[温湿度・騒音・酸欠作業場所]の測定の実務(J-85)

化学物質管理専門家養成講習テキスト(J-101)

法令・規則集

労働安全衛生法 労働安全衛生法施行令 (安全衛生情報センターへリンク)
労働安全衛生規則
粉じん障害防止規則
石綿障害予防規則
電離放射線障害防止規則
特定化学物質障害予防規則
鉛中毒予防規則
有機溶剤中毒予防規則
事務所衛生基準規則
酸素欠乏症等防止規則
作業環境測定基準
作業環境評価基準
作業環境測定法 作業環境測定法施行令
作業環境測定法施行規則
作業環境測定法に関する質疑応答集(Q&A) [232KB] 平27・9・15 基安化発0915第2号
作業環境測定について(解説) 作業環境測定を行うべき場所と測定の種類等
管理濃度(作業環境評価基準 別表)
作業環境測定の記録のモデル様式(令和5・10・1) 令和5・9・28改正 [4.03MB]
作業環境測定機関の事業報告書の様式の改正について [583KB] 令和4・7・15
(個人サンプリング法 追加登録用)
化学物質による労働災害防止のための新たな規制について―労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容―(2022・06・06) (厚生労働省へリンク)
令和2年4月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(塩基性酸化マンガンおよび溶接ヒュームに係る規制の追加)(2021・01・27)
化学物質による労働災害防止のための新たな規制について―労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容―(2022・06・06)
平成29年6月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(三酸化二アンチモンに係る規制の追加)
平成29年1月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(オルト-トルイジンに係る規制の追加・経皮吸収対策の強化)
平成27年11月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(ナフタレンおよびリフラクトリーセラミックファイバーに係る規制の追加)
平成26年11月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(DDVPおよびクロロホルムほか9物質に係る規制の追加)
平成26年6月に公布された改正労働安全衛生法の改正について(ラベル・リスクアセスメント関係)
騒音障害防止のためのガイドラインの見直しについて(WEBセミナー【厚生労働省】) (2022・03・07掲載)
エチルベンゼン等の作業環境測定について (2013・05・29更新)
[インジウム化合物][コバルトおよびその無機化合物]についても、こちらをご覧ください。
改正女性則について (2012・11・27掲載)
安全衛生関係主要様式(作業環境測定基準関係/作業環境測定法施行規則関係など) (厚生労働省へリンク)
石綿(アスベスト)関連労働安全衛生法規
最近の法令・通達等の動き 最新の法令・通達の制定・改正に関する解説については、会員専用ウェブサイトに掲載しています。